3 月 の ネ ル 物 語


 我が家のあるマンションの敷地に「まんさく」の花を見つけました。
 20数年前、朝の連ドラでタイトルとなった「まんさくの花」は、東北地方で最初に春を知らせる花と言われます。 柏に似た葉を持つ低木の、枯れ葉を残す枝に咲く花は、糸のような黄色い花びらの目立たない存在です

 今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。


(とっておきのはなし 5)
 わたしはニケと、楽しい何日かを過ごしました。
いつもニケと一緒にいましたが、そのうちニケはわたしだけを置いて散歩に行くようになりました。 わたしは外の世界になれていないし、車が通ったり、犬や人に会うといやなのであまり散歩はしないようにしていました。ニケはわたしとひなたぼっこばかりしている毎日に退屈したようです。 わたしはお昼寝がすきなので、少しずつニケとは別行動をとることが増えました。
すでに、ご飯を食べさせてくれる家とか新鮮な水の飲める場所、安全な散歩のルートなどはわかっていましたから生活に不自由はありませんでした。
じっとして昼寝をしていると、雀や他の鳥達が近くにやってくることがあります。鳥たちは、家々の芝生の中や木に付いている虫をついばんだり、草に残った種を食べたりするのです。昼寝をしていると、わたしに気づかないで近くに降りて来たりするのです。残念なことに、鳥達も敏捷なので捕まえることは滅多にできませんが、それでもハンティングはとてもスリリングなスポーツです。
わたしが塀の上から鳥を狙っているとき、またパパが探しに来ました。「ネル、ネル」という呼び声が聞こえたのでパパが来たとわかりましたが、夢中で遊んでいたのでつい隠れるのを忘れてしまいました。パパはしばらくわたしの名前を呼んだあとどこかへ行ってしまいましたが、一瞬姿をみられてしまったような気がしました。
 一方、ニケがわたしといる時間は更に短くなり、だんだんと別行動をとることが多くなりました。わたしには、ニケ以外に頼るネコがいませんから、おもしろくありません。ニケにはわたし以外にも知り合いがたくさんいて、よそで仲良くしているみたいです。最初のうちはとてもやさしくて親切だったニケが最近はそれほどでもなくなったように感じらるようになりました。そんな頃、ニケに余所のネコの匂いがついているのに気づき、あんなにわたしを大好きだといったのに許せないと思いました。


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